【Vol.19 ボルドーのワイン】
フランス南西部に位置するボルドー地方は世界的に有名なワイン産地です。
大西洋に面していて、暖流の影響により年間を通して温暖な気候です。
白ワインやロゼワインも造られますが赤ワインが最も多く生産されています。
カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フランといった品種をブレンドして、重厚な長期熟成タイプの赤ワインを造り出すのが特徴です。
ボルドーの産地
産地はジロンド川とその上流のドルドーニュ川、ガロンヌ川の沿岸にあり、長い年月の堆積で砂利質と粘土質の土壌が広がります。 砂利質土壌はカベルネ・ソーヴィニョンの栽培に適していて、粘土質はメルローに合っています。
1.メドック地区
ジロンド川の(上流から見て)左岸に広がる台地で、砂利質と粘土質が混ざり合った土壌です。
上流域は砂利質が多く、下流に行くほど粘土質になります。
ボルドー5大シャトーのうち4つが存在するボルドーを代表する産地です。
2.グラーヴ地区
ガロンヌ川の左岸に広がる、メルローの栽培が盛んな地域です。
グラーヴとは小石の意味で、小石や砂利の多い土壌です。
この地区では古くから白ワインも多く造られています。
5大シャトーのひとつ「シャトー・オーブリオン」があることで有名です。
3.ソーテルヌ&バルサック地区
ガロンヌ川上流の左岸にあり、支流のシロン川の霧がもたらす湿気を利用して、甘口の白ワインである貴腐ワインの生産を行う地域です。
4.サン・テミリオン地区
ドルドーニュ川の右岸に位置するメルローとカベルネ・フランの栽培が盛んな地域です。
コクがあって力強い味わいで、タンニンがビロードの様に滑らかなワインを造り出します。
5.ポムロール地区
ボルドーで最も小さな産地のポムロールは、サン・テミリオンの隣に位置します。
酸化鉄を含んだ粘土質土壌で造られたメルローは、繊細で柔らかい風味のワインになります。
メルロー主体の「シャトー・ペトリュス」は世界的に有名です。
6.アントル・ドゥ・メール地区
ドルドーニュ川とガロンヌ川の間に広がる粘土石灰質土壌の産地で、ソーヴィニヨン・ブランなど爽やかな白ワインが多く造られています。
7.コート地区
ボルドー地方の様々な場所に点在する丘陵地からなる産地です。
メドック格付け
生産者はお城を意味する「シャトー」と呼ばれ、メドック地区では古くからシャトーの格付けが行われてきました。
格付けは61シャトーが第1級から第5級までに分類され、その第1級は5大シャトーと呼ばれ称賛されています。
柔らかく女性的と言われる「シャトー・マルゴー」、王室御用達のワインとして知られる「シャトー・ラフィット・ロートシルト」、力強く男性的と言われる「シャトー・ラトゥール」、格付け2級から1級に昇格した唯一のシャトー「シャトー・ムートン・ロートシルト」、ただ一つメドック地区でなくグラーブ地区の「シャトー・オーブリオン」です。
長期熟成の偉大な赤ワインを造り出す5大シャトーはワイン愛好家の憧れです。
ファーストラベル
シャトーが生産する最上級のワインを「ファーストラベル」と呼びます。
同じ生産者がファーストラベルとは違うブドウを使って造るワインを「セカンドラベル」と呼び、価格が抑えられて販売されます。
更に安価でカジュアルな「サードラベル」と呼ばれるワインもあります。
第1級シャトーの代表ワインであるファーストラベルは大体10万円以上と高価でなかなか飲めませんが、そのセカンドラベルやサードラベルはちょっと頑張れば購入できる価格です。
ただファーストラベルとはブドウもブレンド比率も違っていて、同じ味わいではありません。
ワインを飲み始めた頃5大シャトーのセカンドラベルを集めて飲んでみたことがあります。
当時の私は上等な赤ワインは重厚なもの、とにかく重くて濃厚だと思っていましたが、飲んだワインは重厚と言うよりはバランスが良い優しい味わいでした。
赤ワインは重いことこそ正義みたいに信じていた私には驚きで、ワインに更に興味がわいたのを覚えています。
重たいだけのワインならチリやアルゼンチンなど新世界にも沢山あるので、美味しく感じるワインはそれ以外のファクターとのバランスが大切だと今は思っています。
何を選ぶ?
5大シャトーは憧れですが、それ以外でも勿論美味しいワインは沢山あります。
格付け第2級シャトーのファーストラベルを何度か飲みました。
そのワインは香り、味わい共に最高に美味しいワインでした。
価格は5大シャトーのセカンドと同じくらいだったので、私としては格付けを落としてでもファーストラベルを選びます。
ただセカンドラベルでもファーストラベルと同じくらい美味しいワインに出会ったことがあるので一概には決められません。
生産したシャトー、ワインのヴィンテージと飲み頃の時期によって大きな違いがあると思います。
メドック格付けは1855年に制定されてから一度しか変更されていません。
現在では格付けされていない生産者でも格付けシャトー以上に評価されるワインも沢山あります。