【Vol.15 劣化ワイン(ブショネと還元臭)】
購入したワインを開ける時ってワクワクしますよね。 でも抜栓して香りを嗅いだとき、あれっ何か嫌な臭いがするなとか、飲んだらちょっと臭く感じるなどの経験はありませんか。 熟成が進み過ぎてドライになっているのとは違って、不快な匂いが漂う状態です。 その主な原因は2つで、ブショネと呼ばれるコルク由来の細菌によるものと、酸素不足から生じる還元臭です。
ブショネ
ブショネは、ワインの栓に使われるコルクに潜んだ細菌と、コルクを漂泊するための塩素が結びついて発生するTCA(トリクロロアニゾール)が原因です。
湿った雑巾やカビのような匂いがし、改善することは出来ません。
ワインバーで酷いブショネのワインを嗅がせてもらったときは思わず唸るほどの匂いでした。
ブショネに当たってしまう確率は5%と言われていますが、何年も飲んでいてもそんなに酷いブショネに遭遇することは稀です。
ただしブショネにも程度があるので、もしかしたら微かに感じた不快臭は軽いブショネだった可能性があります。
最近では金属製のスクリューキャップや合成コルクを採用したワインも増えてきて、ブショネは減少しています。
もし運悪くブショネに当たってしまった場合、レストランならソムリエに伝えて下さい。 ブショネなら新しいワインと交換できます。 お店や通販で購入された場合は、販売店によって対応が異なり、交換できない場合もあります。 高価なワインを買われるときは販売店のポリシーを確認しておくことをお薦めします。
還元臭
ブショネにはほとんど当たりませんが、醸造過程やボトル内の酸素が足りないことに起因する還元臭は結構良く遭遇します。
発生する硫化水素によって卵の腐ったような硫黄系の匂いがします。
ブショネと違って還元臭は空気に触れて時間が経つと不思議と消えてしまいます。
直ぐに飲みたい時はキャラファージュしたり、ポワラー使ったりもしますが、しばらく時間を置いた方がきれいに消えるように思います。
翌日もしくは2日後に全く異臭がなくなることも少なくありません。
もし時間が経っても匂いが改善されない場合は、ブショネを代表とするワイン劣化の疑いがあります。
また自然派ワインには酸化防止剤など添加物が少ないため還元臭が発生する確率が他のワインよりも高く、ビオ臭とも呼ばれます。
自然派ワインを敬遠する人はこの還元臭が苦手な場合も多いのではないでしょうか。
そんな方こそ時間をあけて自然派ワインの本当の美味しさを味わってみて欲しいと思います。
他のワイン劣化
ブショネや還元臭の他にも、過度の酸化や様々な菌の繁殖、腐敗などによってワインが劣化してしまうことがあります。
以前、大手のワイン通販店から購入した白ワインが臭かったことがあります。
5万円もするブルゴーニュの有名ワインです。
還元臭を疑いましたが数日しても匂いが消えません。
販売店に連絡して返送し調べてもらいましたが、驚くことに何も問題ないワインとの回答でした。
時間が解決してくれたのかと思い直ぐに送り返してもらってもう一度飲んだところ、やはり臭い匂いは消えていません。
自分の嗅覚を疑いながらも納得できなかったので、近くのワインバーに持ち込んでソムリエに飲んでもらいました。
ソムリエの方によるとブショネではないけれど酷く劣化したワインだとのことで、自分の嗅覚が異常でないとわかり安心出来ました。
偶然隣り合わせた他のお客さんにも味見してもらったところ、その臭さに驚いていました。
ワインは開けてみるまで劣化もブショネも分からず、返品を受け入れない販売店もあるようですが、それならそう説明することが誠実ではないでしょうか。
何も問題ないと回答した大手通販店とは縁を切りました。
ワインはボトルに封入後でも熟成していく生き物です。
適正な温度、湿度で管理されていても、その一部は何らかの理由で品質劣化してしまうようです。
ワインを楽しむ上でこれは仕方のないことに思われます。